トウヨウミツバチ・海外編 ・・海を渡るミツバチ

 
 2年ほど前、オーストラリアの養蜂雑誌に北オーストラリア州のダーウィンにトウヨウミツバチが侵入して検疫所の手により駆除された記事があった。パプアニューギニアで貨物船に分蜂し、運ばれてダーウインの町に飛び込んだようである。養蜂関係者の一番の心配はこの蜂が以前から世界各国で問題になっているミツバチヘギイタダニ(以下ダニ)をまだ汚染地域でないオーストラリア本土に持ち込んでないかということであった。日本でも20年以上前から被害が多く、対策に果樹や野菜用のダニ剤が転用され使用されている。このことは最近、消費者から要望の強い有機、自然、オーガニック食品の対応の足かせとなっている。
1999年12月20日には同国クィーンズランド州ブリスベンに同様にトウヨウミツバチが侵入して検疫所の手により駆除された。この際、以前から問題視されていたダニが見つかり、現在侵入の可能性のありそうな港、空港などには捕獲用巣箱が設置されている。 昨年9月、私が訪れたシドニー郊外のニューサウスウェルズ州政府の養蜂担当者からは侵入は食い止めており、ニュージーランドのようなことはないと答をいただいている。
そのニュージーランドの話を付け加えておく。2000年4月13日、オークランド郊外の養蜂場で例のダニが見つかった。ダニの侵入経路は不明であるがトウヨウミツバチ群の侵入また汚染地区からの女王蜂の密輸などが考えられる。調査が進むにつれ汚染群数がどんどん増え、3月後には汚染群はおよそ4000群となった。調査後、政府は汚染群を殺虫、焼却などの強い対策は立てず、他の汚染国並に薬剤や管理の改善などで対応すると発表した。これで40年以上も養蜂産品、ミツバチなど検疫に係る一切のものの輸入を禁止し、ヒラリー卿を頂点とする世界でもっとも模範的な養蜂の国と自負するニュージーランドの信用を一瞬にして失ってしまった。さらにいままでミツバチの伝染病に使用する抗生物質を厳しく制限して有機蜂蜜を目指し、ピロリ菌を抑制するとして注目されているマヌカハニーで鼻息の荒かった養蜂家の意欲まで奪うと思われる。 最近、日本にきたニュージーランドの南島の養蜂家の話では汚染地区として北島のみ指定されているが、すでに南島もダニがいるそうである。今後の成り行きに注目したい。
オーストラリア国内で検疫所の受付横に張られた
トウヨウミツバチ侵入の危険性を啓蒙するポスター
ついでに日本の話も付け加える。国内でも同様の話がある。数年前、神奈川県の住宅地でオオミツバチが見つかった。ミツバチを大別した4種のひとつ。三重県の大学教授が知らせを受け、処理。そのあと、東京都内の某大学の教授は蜂の死骸を見て帰ったということである。オセアニアと違うところはこの検疫上、重要な情報が世間に出ないことである。蜂に食べさせてもらっている業界の新聞や研究会誌などで議論された話は聞かない。業界紙、研究会誌 、インターネットにも情報が出ない、いや出さないのか。侵入した蜂についているかも知れない 疾病の危険性には関心がないかもしれない。毎年、数多くの女王蜂を輸入する私にとっては不可解である。実は現在、国内のミツバチの疾病の完全なリストはない。だれも日本にどんな疾病があるのか正確に知らない。何の疾病を検疫で防がなければならないのか判らない。昔、青年海外協力隊としてフィージー農務省養蜂課で勤務の際、目にしたオーストラリア、ニュージーランドの疾病リストにはウィルスレベルまで調査されていた。国内のミツバチ研究機関では獣医がほとんどおらず、健康食品業界の口利きする医師やミツバチ研究機関が目立っている現状では致し方ないようである。エイズ、口蹄疫、C型肝炎のようにあとから気付いてしまったなどという事のないように願っている。2004年3月
愛媛県内のニホンミツバチ巣箱 巣箱の入り口で出入りするニホンミツバチ(Apis cerana)
       越智孝    ビーライン

 


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